早いもので2月も終わりです。まさに「二月は逃(に)げる」。今日の講師は倫理研究所より参与の三好先生に来ていただきました。タイトルは「継栄(けいえい)の条件」。造語ですね。継続的に栄える経営ってことですね。
簡単な自己紹介をされたあと、先生は自分の反省から話をされました。人間、調子が良くなってくると慢心するものだ・・・と。昔、ある社長にそのことを指摘されたとき、頭にきて喧嘩してしまっていた・・・と。思い上がっているのではないか、と言われつい頭に血が上ってしまったことがあると。今の温厚なお姿からは、ちょっと・・・というより全く想像もできませんが。
中小企業の倒産件数は、景気とは関係ないと先生は言われます。たしかに、今は好景気だと言われますが、あまり・・・実感ない方が多いのではないでしょうか。中小にとっては、経営環境が良い時ほど、人材が確保できない等、逆風のことさえあります。これらの倒産に至る要因は全て慢心によるもの、先生は戒められます。
~ちなみに、ここ数年、リーマンショック以降、倒産件数は一貫して減少傾向、と表面上は言えるのですが、休業・廃業はデータに反映されていないのです。
(休業・廃業数は倒産数の約2~3倍)。また企業買収(M&A)の数も反映されていません。
では、「慢心」とはなにか? 慢心とは、自覚を失くすことと言われました。自らの立場の自覚が低下すると、やがて危機がおとずれる・・・と。もし、社長であるあなたが、家に帰ってからも、
夫の顔や、父の顔を忘れ社長面をしていたらどうなるでしょう。家に帰ったら、ただいま、おかえりという挨拶で、心のストレスから解放され、また次の日の仕事に向かっていけるのではないでしょうか?
この慢心の結果、自らの働きが人に受け入れられていない状況が、売上の減少ではないでしょうか。ドラッカーも言っています。企業の価値を利潤追求に求める経営者がいるが間違いである。大事なのは売上だと。他社からの評価 = 売上
なるほどその通りです。お客様がいいと思うから買ってもらえるわけですから。
そして、この慢心、社員にはすぐに見抜かれるということ。ドキッとする言葉を言われました。
「社長を見抜くのは3日、社員を見抜くのは3年」
最後に、このことを端的に表すエピソードを紹介します。
ある測量会社の二代目社長の話。何度も何度も同じミスばかりする社員がいたそうです。まさに、会社のトラブルメーカー。社長は、仲間の社長にこんな社員はやめてもらおうと思っているとこぼしたとか。そしたら、仲間の社長は言ったそうです。「無駄だ、やめさせたらやめさせたで、また新たなトラブルメーカーが誕生するから。だから、やめさせても無駄だよ」と。
そして、いろいろと話をしていくと、この社長、真面目な人なのですが、会社を継ぐのはあまり本意ではなかったようなのです。本来なら、自分の兄が継ぐはずだった、自分にはもっとほかにやりたいことがあった。この思い、困難がおとずれたときに、ちょくちょく顔を出していたのですね。それが、従業員にはしっかり伝わっていたということ。
この二代目社長、心から反省したそうです。いい加減な気持ちで跡を継いでごめんなさいと。そして、父親に今後のことを近い、従業員を集めて謝罪したということ。やめさせようとした社員には、いろいろと気づかせてくれてありがとうと伝えたそうです。その社員さん、今ではその社長の右腕になっているとか。
~編集後記~
「慢心」については古(いにしえ)よりさまざまな偉人がありがたいお言葉を遺しています。
この地域の英雄、徳川家康公は
「勝つことばかりを知りて、負くるを知らざれば、害その身に至る」と
実は、筆者の座右の銘の一つですので、全文を載せさせていただきます
人の一生は重荷を負ひて、遠き道を行くが如し。急ぐべからず。
不自由を常と思えば不足なし。心に望み起こらば、困窮したるときを思い出すべし。
堪忍は無事長久のもと、怒りは敵と思へ。
勝つことばかりを知りて、負くるを知らざれば、害その身に至る。
己を責めて、人を責むるな。及ばざるは過ぎたるより勝れり。
~徳川家康公遺訓~
筆者:中川区倫理法人会 幹事 宮川 拓 (東京海上日動あんしん生命保険㈱)
≪講師プロフィール≫
一般社団法人 倫理研究所 参与
三好 雅典(まさのり)様
東京都千代田区三崎3-1-10
電話03-3264-2251